現代のビジネスで欠かせないITシステム。システム「運用」や「保守」は、企業の安定した組織運営の重要な部分を担っています。
その中で多くの企業で書類のデータ化が進められています。そのため、企業で保存・管理されているデータは膨大なものとなり、災害やサイバー攻撃などでデータが破損・消失した場合、企業が受けるダメージは多大です。
そのため、企業におけるデータのバックアップは非常に重要です。今回はデータのバックアップの重要性や、バックアップに役立つクラウドストレージについてご紹介します。
データの運用と保守の違いとは?
まず「運用」とは、日常的に業務システムが安定して稼働するように管理したり、設定や操作することです。一般に、顧客のところに常駐して仕事をします。これに対して「保守」とは、納品後のシステム(ハードウェアやソフトウェア、ネットワークなど)全体をサポートする業務です。こちらは一般に非常駐で、顧客を定期的に巡回したり、呼び出しに対して対応します。
運用と保守は、はっきりと区別される業務ではなく、「システムが正常に稼働するように運用し、そのメンテナンスのために保守が不可欠」という、連続した関係にあります。以下で、それぞれ詳しく見ていきましょう。
運用とは「システムを動かすこと」
「運用」は、一般的な単語なので、それだけで検索すると「資産運用」などの結果が多く表示されます。システムでいう運用とは、想定外のトラブルや不具合でシステムを停止させることなく、安定的に稼働させ続けることです。ハードウェアやソフトウェア、ネットワーク、データなどを、幅広く管理することで、「運用管理」と呼ばれることもあります。英語だとmanagement マネージメントです。
そのためには、システムを常に監視し、状態を正確に把握する必要があります。監視ソフトウェアで自動監視したり、稼働ログを確認して、システムの状態をチェックします。
また、システムを使うユーザに対してのサポートや支援、ヒアリングなど、人への対応も、安定したシステム運用には不可欠です。
主な運用作業の例
- サーバの起動や停止
- 定型化されたオペレーション(定時のデータを入力など)
- システムの稼働状態の監視(トラブルや不具合、死活監視など)
- 外部からの攻撃など、セキュリティ監視
- 急激なアクセス増加などの、リソースやキャパシティ管理
- メモリやディスクなどの性能監視
- スケジュールバックアップ
- システムに関するインシデント(利用者がやりたいことができない状態)への対応
- 新しい技術の調査や対応
- システム利用者向けの説明会や学習リソース提供
- 操作に関する問い合わせへの対応、要望や改善提案等のヒアリング
保守とは「トラブルを回避したり、復旧させること」
「保守」とは、運用に支障がないように予防措置を講じたり、起きてしまった故障やトラブルが原因でシステムが停止してしまった時に、復旧や、プログラムを改修することです。運用と大きく違う点は、必要があれば「システムを改修、調整したり、修理する」ことです。英語だとmaintenance メンテナンスです。
運用と異なるもう一つの点は、障害の発生や機器の故障を、事前に予測することが非常に難しいことです。そのためにも、日頃のシステムの稼働状況をモニターし、改善策を立てて実行します。それでも障害が発生してしまった場合は、その障害を取り除き、必要に応じて改修や復旧作業に取り掛かります。イレギュラーな対応が必要なため、担当者には、冷静な判断力と高度なスキルが要求されます。
主な保守作業の例
- サーバハードウェアのメンテナンス
- 老朽化した周辺機器のリプレース
- ネットワークのメンテナンス
- セキュリティ管理全般
- バックアップなどの復旧作業
- システムのアップデートや修正、変更、パッチ、リリース対応
- データベースのチューニング
- 新しいシステムやアプリケーションの導入
- バグや不具合の原因究明
- 障害からの復旧作業
絶対すべきデータのバックアップ その理由や重要性
そもそもデータを失う原因はなんでしょうか。まずはデータの破損・消失が起こりうる事態をご紹介した後、バックアップを取る理由や重要性についてご説明します。
人的ミス
データを扱うのは人の手によるものが大部分のため、人的ミスによりデータを破損したり消失させたりすることがあります。データ整理中のファイルの取り違いによる削除やデータ更新のミスなど、考えられる事態はさまざまです。まずはOS付属のバックアップツールやクラウドサービスが提供しているアプリケーションで、バックアップを自動化することをお勧めします。
ソフトウェアに起こるトラブル
バグやインストールした他ソフトとの相性などにより予想しないトラブルが生じ、データが破損することもあります。特に、注意すべきはコンピューターウイルスで、感染してしまうとデータを取り出すことができなくなったり、全て失ってしまったりすることもあります。コンピューターウイルス対策ソフトをインストールするといった対策も当然必要となりますが、やはりバックアップを取っておくのが安心です。
ハードウェアに起こるトラブル
パソコンやサーバーなどは、使い続ければ経年劣化します。適切なメンテナンスを怠っていると、ある日突然パソコンが起動しなくなるという事態も起こりえます。また、盗難によってパソコンやデータサーバーが盗まれてしまうということもありえますので、バックアップを取っておくことが必要です。
BCPから考えるバックアップの重要性
BCPとはBusiness Continuity Planの略称で、日本語では「事業継続計画」となります。自然災害や大事故などが起きた際の企業の方針や体制、手順をまとめた計画書です。
BCPを策定しておくことにより、自然災害や大事故などが起きても企業にとって重要な事業を継続することができます。万が一中断してしまったとしても、あらかじめ対応策を決めていれば短期間で企業としての機能を復旧することができます。東日本大震災や大型台風の襲来などから防災意識が高まっている現在、各企業で普及が進んでいます。
自然災害や大事故などが発生した場合、ハードウェアをはじめとするシステムが被害を受け、データが破損したり、システムトラブルが発生したりすることが予測されます。その際、バックアップを取っておけばBCPに従い円滑なシステム復旧を行えます。対策を施していないと、最悪の場合復旧ができない事態に陥ります。有事における安定的な事業継続のためにも、データのバックアップは必要不可欠といえます。
ここで考えなければいけないのが、どのようなツールを利用してバックアップを行うかです。同じ場所でサーバーや記憶媒体などにバックアップを取っていた場合、自然災害や大事故発生時には多くの機器と同様に破損や機能停止のリスクが高くなります。そこで、BCPの観点からバックアップに有効なツールとして注目を集めているのがクラウドストレージです。
クラウドストレージでデータをバックアップするメリット
クラウドストレージは、自社でハードウェアやメディアの用意、保管・管理をする必要がなく、事業者(ベンダー)のサービスを利用するので導入が簡単です。費用は定額制や従量制で毎月決まった金額が課金されます。ストレージの契約容量は、用途や事業規模などによって増減でき、プランによっては無制限で使うことが可能です。インターネットに接続されていれば、ウェブ上でどこからでもデータにアクセスでき、さらにはデータの共有が複数人でできる点もクラウドストレージの大きなメリットと言えるでしょう。
セキュリティはベンダーが管理しているので基本的には強固です。ただし、IDとパスワードがあれば誰でもアクセスできるので、人的ミスによる漏えいが起きないようにすることが重要です。また、もちろんベンダー自身でもバックアップを取っています。
データのバックアップに使えるツールは?
各種クラウドストレージのなかでもおすすめのツールにはどのようなものがあるのでしょうか。ここではビジネス活用に向いている3つのツールをご紹介します。
Box
企業向けとして多くの大企業に使われているクラウドストレージサービスです。無料で使えるデータ容量は10GB、データ容量無制限の場合は1ユーザーにつき1ヶ月1,800円です。Boxの特長は、大企業から大きな信頼を獲得しているセキュリティにあり、国際規格に準拠しています。Boxは各ユーザーの権限を詳細に設定することが可能で、履歴の管理までできます。また社内外のユーザーとのコラボレーションにも向いています。
Dropbox
クラウドストレージとして有名なサービスです。データ容量は2GBまでなら無料で使用でき、必要に応じた容量で利用したい場合は1ユーザーにつき1ヶ月2,000円から使うことができます。パソコンにDropboxをインストールするとまず専用フォルダが作成されます。それ以降は作成されたフォルダーに必要なデータを保存すれば、Dropbox上にも自動的に保存される仕組みとなっています。普段パソコンを使うのと大差ない手順で使える扱いやすさがDropbox最大の特長です。またウェブ上からでも利用可能なので、WebブラウザーからDropboxにログインしてデータにアクセスできます。組織の規模によって、機能やデータ容量などが異なるので、利用状況や運用方法を検討してから、導入したほうがいいでしょう。
GoogleDrive
Googleが提供するクラウドストレージサービスです。データ容量は15GBまで無料で利用できます。使用したいデータ容量によって、30TBまで保存可能容量を増やせます。ただしGoogle DriveはGoogleの各種サービスの保存先として使われてしまうという点に注意が必要です。フリーメールとして有名なGmailやGoogleフォト、Googleドキュメントやスプレッドシートまで全てGoogle Driveに保存されることになります。そのため、Google Driveの保存可能容量全てを自由には使えない可能性もあるので、事前にしっかり確認しておくべきでしょう。
まとめ
データはちょっとしたことで簡単に破損してしまい、一度破損したデータを復旧することは困難です。また災害やサイバー攻撃など、データの消失・破損などによって事業が停止してしまうことは、企業価値の毀損につながります。企業は、常日頃からデータのバックアップ体制を構築しておくべきでしょう。
クラウドストレージは、自社内にデータを保管するよりも簡単で安全にバックアップが取れる便利なツールです。導入コストの優位性もあるので、今後さらにビジネスシーンで活用が進むでしょう。データのバックアップについて不安がある企業は、クラウドストレージの導入を検討してみてはいかがでしょうか?^^
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